このページは、ロクマルライター養成講座で学んだ受講生による取材記事です。

昨年私は病を経験し「人生にはタイムリミットがある」と初めて現実を直視できた。いつ何が起こるかわからないのだから、クヨクヨするよりも今自分が置かれた境遇の中で、今日できることを精一杯やろう。傾聴活動、認知症の方への声かけ…何か小さなことでもいから、地域に笑顔を生み出せるような、相手も自分も喜べる活動に関わっていきたいと思えるようになった。

今回は、横浜市都筑区にある「認知症予防ファミリーカフェ」代表の森悦子さんに話を聞いた。

身近な問題である認知症

民生委員・児童委員・自治会長を兼務する森さん。人と人とをつなぐ橋渡し役として、40年以上にわたり地域活動に力を尽くしている。

国の有病率調査によると、横浜市の認知症高齢者数は2015年に約14万人に対し、2015年には約20万人と増加し、65歳以上のおよそ5人に1人が認知症になると予想されている。そんななか、認知症についての正しい理解と情報が得られ、認知症の本人や家族、地域住民など、年齢を問わず誰もが気軽に参加できる「集いの場」が作られた。2019年12月現在、都筑区内には9か所の認知症カフェがある。

参加者もスタッフも、みんなが楽しめる場所に

ファミリーカフェは、〈誰でも気軽に“ふらっと”立ち寄れて、階段がなく“フラット”な垣根のないカフェ〉というコンセプトのもと、2018年10月に誕生した。立ち上げのきっかけは「身近に住民同士が気軽に集まってお茶を飲みながら過ごせる居場所がなかったこと。区のシニアスター養成講座に参加した際、以前から描いていた設立への想いを固め、夢を実現した」とのこと。

参加費100円で飲み物やお菓子・ゲーム・脳トレ・歌・体操などを楽しめるほか、身近な話題からサギ被害防止の啓発や、認知症予防の提情報供をおこなっている。また、地元の金融機関、保健師、ケアマネジャーも参加しているので、日常生活での困りごとをその場で専門職に相談できることも喜ばれているという。

「楽しかった」と笑顔で言ってもらえることが元気の源

認知症やその家族の応援者である「認知症サポーター」を養成するキャラバン(講師役)を務め、正しい認知症への理解を広めている。

初めは『認知症』という言葉に抵抗感をもたれる苦労もあったが、賛同者からの協力を得て、カフェの楽しさが口コミで広がり、参加者も増えているそうだ。「楽しかった!と言われることが一番うれしい。住民の人たちの声に耳を傾け、その声を専門機関へと届ける役割が果たせる場所でありたい」と森さんは語る。

運営に力を発揮しているのは、地元のシニアスタッフだ。中には健康のため一カ月に50万歩以上歩いている方もいるというから驚きだ。みなさんが笑顔でイキイキしている。まわりの人から「ありがとう」と声をかけられ、社会貢献できているという意識が元気の源になるのだと、話を聞きながら改めて感じた。

お互いがお互いを支え合う関係に

「とにかく自分から声かけをする。人とのめぐり逢いは人生を豊かにする」と森さんは言う。実は私も森さんの心遣いに救われた一人だ。持病の悪化、入院・手術のため失業し、先の見えない不安な日々を過ごしていた時、「具合はどう?」と通りがかりに声をかけられた。その時に感じた温かさは今でも忘れられない。

森さん自身も20代の頃から病を抱え、生死の境をさまよった経験もあるというが、「人と会って活動することが健康管理になっている。まわりからパワーを吸い取っていると言われるのよ!」と笑顔で話す。自分の体調を受け入れつつ、力強く前向きに行動する姿に、鬱々としていた私は勇気づけられた。人に寄り添ってもらうことで『自分は一人ではない』と、前向きな気持ちになれることを心底実感できたのである。

人と人とのつながり、ご縁に感謝する

一見マイナスとも思える病の経験から得たものがある。それは、生活の基盤である最も身近なコミュニティに目を向けるきっかけを与えられ、新たな人との縁が生まれたことだ。様々な立場の人と出会い価値観にふれることで、そこにはワクワクするような発見と成長がある。1人1人が互いに関心を持ち、それぞれの持味を生かして協力し合えば、笑顔で暮らせる町づくりの大きな力になるはずだ。

取材・文・写真 小堀雅子

◆プロフィール
都筑区在住。高齢者の社会福祉に関心を持ち、認知症サポーターとして高齢者施設で傾聴ボランティア活動を行う。