●2019年6月14日(金)学び直し塾選択科目D-1, 公開講座

日 時:2019年6月14日10:00~15:00

会 場:東山田工業団地 製造業 4 社

参加者:14名(男性3名、女性11名)

今回の講座は、地元の製造業とのコラボ企画です。「どんな会社がどのような仕事をしているのか、地域との関連や果たしている役割、製造業の面白さや魅力に触れて知る」ことを目指します。

梅雨晴れの中、集合場所の株式会社スリーハイさんに20代から70代の幅広い世代の参加者が揃いました。同社社長の男澤さんから、この地域の特徴や見学予定の3社の概要をレクチャーしてもらった後、工場見学に出発です。男澤さんがガイド役を務めてくれました。

住宅と工場が共存できるまちづくり

ここ東山田工業団地は準工業地域です。工場と住宅が混在しているため、騒音や臭い、振動などを起因としたトラブルが発生しやすい環境です。「地域住民との良好な関係が続くことが、この地で操業を続けられ、従業員の雇用を守れることになります」と男澤さん。地域の方を招いた工場見学や近隣の小学校の社会科見学の受け入れなど、事業者の方々が協力し合って地域住民との相互理解を深める努力をしています。

ギアやプーリーなどの樹脂部品を生産 (株)ワイ・エム・ディー

本日最初の見学先は、(株)ワイ・エム・ディーさんです。工場に入るとずらりと並んだ大きな機械が目に入ってきます。どの機械の周りもきれいに整理整頓され、床もきれいに磨かれています。数人の社員の方が静かに作業中。

社長の安藤さんが、成型機を前に部品ができるまでの工程を説明してくれました。材料の樹脂を溶かすところから出来上がった部品を金型から取り出すところまで、この1台で完結するそうです。機械はコンピューターで制御されていているので、途中で人の手が必要な場面はありません。

同社が製造している部品の多くは、車のガソリンポンプの部品に使われます。車の安全性にかかわる重要な部分なので、高い精度が求められるそうです(1㎜の1000分の2の精度)。ハイテクの機械を使っているとは言え、この精度を維持するためには大変な技術力が必要なはず。熟練した技術者による毎日の機械のメンテナンスが、それを可能にしているそうです。

衣料品のダメージ加工 (有)動夢計画

(有)動夢計画さんは本日の見学予定に入っていませんでしたが、ご厚意で見学させてもらえることになりました。この地域では小学生対象の工場見学も行っているそうで、子どもたちに人気ナンバーワンの工場なんだとか。

開放的な工場には、工業用の大型乾燥機や脱水機が並んでいます。奥には金庫室の扉を思わせるような巨大な洗濯機も。工場の中央にはゴルフボールのたくさん入ったカゴもあります。ダメージ加工に使用しているそうで、表面の凸凹が削れてピンポン玉のようになっています。

同社代表の九鬼さんをはじめ働いている社員の方々はみんな若い。この日、九鬼さんが着用していたのは穴のあいたジーンズです。仕事で着ているうちに自然に破れたそうです。似合っていてカッコいい。この若い感性があるからこそ発注元(ファッション業界)の要望にしっかり応えられるのでしょうね。よく知られたブランドの商品も多数手がけているそうです。

工業用・産業用ヒーターを製造 (株)スリーハイ

2社の見学が終わり、スリーハイさんに戻ってきました。

同社の説明を社長の男澤さんから伺います。スリーハイさんは、主に工業用・産業用ヒーターを製造・販売しています。私たちが同社の製品を直接目にする機会はほとんどありませんが、鏡の曇り止めや雪国のETCのバーなど見えないところでお世話になっています。

顧客の要望に応じたヒーターを一つひとつ手づくりしているそうです。さまざまなオーダーが入ります。例えば、ギターの側板の曲げ加工に用いるヒーターや、絵画の修復で絵の具を軟らかくするためのヒーターなど。耐熱温度700℃のロケット開発用のヒーターも作ったそうです。

ワークショップ  於(株)スリーハイ

スリーハイさんの社員の方々に協力いただき、いよいよワークショップ。端材のシリコンスポンジを使ってペンギンの組み立てオブジェをつくります。まずボールペンで型紙をなぞりパーツを書き写していきます。それを、カッターナイフで切り出し、目はポンチで穴をあけます。パーツが全部揃ったら組み立て。胴体のほぞを足のほぞ穴にはめ込んで完成です。曲線の連続に奮闘努力した皆さん、ものづくりの楽しさを満喫したひと時でした。

『DEN』でランチタイム

『DEN』は地域の方々と顔の見える関係を築く場として設けられたスリーハイさんの工場兼カフェです。午前中は貸し切りでランチ付きヨガ教室が催されていたそうです。その先生方が私たちにもランチを提供してくれました。塩麹漬けの蒸し鶏に色とりどりの野菜料理を盛り合わせたワンプレーに麦入りご飯とお味噌汁、冷たいお茶も添えられました。どれもひと手間かけた優しさが感じられます。皆さん満足げです。

自動車部品や機械用板金部品、金型類を製作 (株)オウミ

本日最後の見学先の(株)オウミさんは、このエリアで一番大きな工場です。工場の周りには沢山の資材や金型が積み上げられています。社長の中島さんに案内してもらい工場の中に。

そこは『ものづくりの現場』そのものの迫力で、レーザ加工機やプレス、溶接機などたくさんの工作機械が並んでいます。この工場でもロボットの導入が進んでいます。機械がせっせと稼働して次々と材料が加工されていきます。自動車の足回りの部品や機械用板金部品など本当にたくさんの種類の製品がつくられていました。

同社は自社製品にも力を入れ、独自性を高めています。オリジナルの水やり不要のプランターもそのひとつ(この地域の道沿いには、同社のプランターに植えられた花が街を飾っていました)。また、東京ビッグサイト青海展示棟で開催されるデザインフェスタ(8月3日、4日)には、キーホルダーなどの小物や雑貨を出店する予定とのこと。

まとめ

一口に製造業と言っても、つくっている物も、使っている機械も1社1社全く違いました。「工場見学なんて子どもの時以来だわ」「大きな工場なら見学コースがあったりするけれど、なかなか中小の工場は見学できないから楽しみ」と期待に胸を膨らませて参加した方が多かったのですが、皆さん工場の雰囲気を思いっきり体験されたようです。

「製造業って面白い。この地域の他の工場も見てみたいです」「ある社長さんの深い言葉に胸を打たれました」「他の業界を見ることができ、少し視野が広がった気がします」「どの会社も社長さん自らが案内してくださいました。社長さんの人間味あふれる人柄にふれ、その会社に一気に親近感が湧きました」などの感想が聞かれました。

この見学ツアーで、これまで接する機会のなかった業界やエリアに目を向けたり、ものづくりの面白さに目覚めたり、参加された方それぞれが何かの「きっかけ」を掴んだことでしょう。