●2019年6月22日(土) 学び直し塾選択科目H, 公開講座

講師:西村美奈子氏(株式会社Next Story)

セカンドキャリアは横並びではない

ファーストキャリアは学校を卒業後一斉に並んでスタートしますが、セカンドキャリアは人それぞれ。ファーストキャリアでは意に沿わないことでも受け入れていく場面も多々ありますが、セカンドキャリアでは、存分に自分のやりたいことをやってみませんか。

2018年の総務省統計局に発表によれば、65歳以上の人口は全人口の28%。65歳以上の女性がはじめて2000万人を超え、女性の3人に1人が高齢者となります。

100歳以上の人口約7万人の男女比は、なんと1:9、この数字に思わずええっ!?本当に?と、誰もが衝撃を受けました。

60代も働く時代へ

男女雇用機会均等法から約30年経ち、 女性も男性と同じように65歳で定年を迎えます。いま定年を迎える女性は、男性にくらべて「生きがい就労」の傾向が強く、やりがいに重点を置いていた分、引退することへのストレスも大きくなっています。

人生の後半戦も働いて、「加齢」を「価値」と捉える時代を迎えます。
そのためには、早いうちから人生後半を見据えたライフデザインを設計することが大事になってきます。

 知る → 描く → 設計する

知る

企業で働いていた人にとって、定年後がどうなるかは想像しにくいものです。
「分からない」ことが不安の原因にもなるので、まずは現実を知り、自分を知ることから。

企業の本音は・・・?

企業から見て、定年後に長く勤めてほしいと思ってもらえる人は、残念なことにそう多くないのが現実。企業にバリューをもたらす人でないと…、という声も聞こえてくるそうです。
一方、残ってもらいたい場合は、最低10年は勤めてほしいという希望も。

では、転職の場合はどうでしょうか?
自社にないスキルや人脈を持って来てくれる人がほしい、直近5年のキャリアが採用の決め手になるなど。
将来を見据えて社内で部署を異動したり、プロボノで経験を積んでおいたりといった、定年までの助走期間をどのように過ごすかも考えておく必要があるでしょう。

セカンドキャリアでは自分の能力を誰かのために使う

Will(やりたいこと)、Can(できること、得意なこと)、Market(市場性)、この3つが重なる部分が、社会に提供するValue 市場価値。
この講座では、ワークを通して、具体的に洗い出す作業に取り組みました。

ワーク1 自分の強み・弱みを書き出してみる

自分のコアスキルとなる、好きなこと、得意なこと、反対に苦手なこと、不得意なことも書き出します。

自己分析に使われる「ジョハリの窓」も紹介されました。自分がどういう人間かを知るには、他人の視点があるとより理解しやすくなります。
1)自分も他人も知っている自分の性質(解放)
2)自分は気付いていないが他人は知っている性質(盲点)
3)他人は知らないが自分は知っている性質(秘密)
4)自分も他人も知らない性質(未知)

将来像を描く

自分を知るワークで掘り下げたところで、セカンドキャリアを自分らしいキャリアにするために、何年後、どの分野で、自分がどうなっていたいかを考えます。

例えば、次のような選択肢があります。
○今の会社で継続就業
○他社に転職
○起業・独立

そのまま同じ会社に勤めるか転職して、会社に求められる人材となる。あるいは、好きなこと得意なことで独立してみるか。

ワーク2 キーワードで自分のこだわりを表現

好きなこと、気になるキーワードをできるだけたくさん書き出し、その中から特に大事にしたいキーワードを複数選び出し、さらにもっとも気になるキーワードを選びます。自分が本当に欲しいものは何なのかを掘り起こす作業です。

ワーク3 キーワードから可能性を拡げる

好きなこと、できること、市場性のキーワードから、可能性をできるだけ洗い出してみます。最低でも30個は書き出すことを勧められました。

一例として、コーヒーが好きな人が仕事の可能性を考えた時、ぱっと思い浮かぶのは「カフェ経営」ですが、コーヒー豆の輸入販売、カフェのマーケティング、カップのデザイン、カフェ経営志望の若者支援など、どんどん可能性を拡げていけます。

自分が好きなことを起点に、 それに関わることをふくらませていくことができます。 ニーズがあれば、アイデア一つで何でも仕事になり得ることを学びました。

当初はこれをやろうと決めていたことも、途中で変わることもあります。 一つに縛られず、今やっていることや市場性から可能性を拡げていくことで、他者との差別化をはかることも可能です。

ワーク4 ビジョン日記

次に、 将来の理想のある1日を描くワーク。日記なので、午前、午後、夜の時間帯に分けて、想像をふくらませます。家族や友人、キャリアに関わること、うれしかったこと、楽しかったの感情など、どんなことでもかまいません。
5年後、10年後の、がんばれば実現できるかもしれないことを書いてみます。

このワークは3人1組で行いました。1人が将来の理想の一日を話し、2人が意見や感想を伝え、順番に役割を交代します。人の夢の話は面白く、興味深く、互いに応援し合うので、大いに盛り上がりました。

自分の将来を書くノートを1冊作ることを勧められました。そこに、ビジョンや計画、アイデアを具体的に書き、たまに見返すと良いそうです。

ワーク5 ありたい自分を言葉で表現

こうありたいと思う自分を言葉で表現します。「○○になりたい」ではなく、「○○になる、○○な毎日を送っている」と宣言調で。

手に入れたいものは何なのか?
「将来○○している」を考えるワークです。

ここで実験。全員目をつぶり、講師が「△@※×!%#~」まったく意味のない言葉を発しました。当然、意味がわからないので、何もイメージできません。
この実験で伝えられたのは、脳はイメージできたものを認識するということ。
つまり、イメージできないものは「実現できない」ことになりかねません。
具体的なイメージを持つことの大切さを学びました。

将来像を具体化する

「将来○○している」を具体的に解説するワークも、3人で話し手、聞き手になり行いました。
例えば、「将来、専門家として社内で認知されている」を具体的にどんな状況になっているのかを考えます。「◇◇なら▲▲さんに聞けと言われている」「◇◇について意見を求められる」など。
「ビジネスが軌道に乗っている」を具体的にすると、「コンスタントに受注がくる」など。

設計する

具体的な将来像を描いたら、次に必要なリソースを考えます。
人脈、知識、経験、資金など、現在持っているリソースを明確にし、足りないものを補うための方法を考えていきます。このギャップを埋めるためのの行動が、セカンドキャリアの準備として必要になります。

目的(何のために)と目標(どこまで)を明確化し、いつまでにどんな行動を取ればよいのか、マイルストーンを設定し、タスクレベルに落としていきます。

さらに、SMARTゴール設定も、具体的に考え行動するために有用です。

  1. Specific(具体的に)
    具体的なゴール設定が必要
  2. Measurable(測定できる)
    目標を達成できたか測定できる指標が必要
  3. Achievable (達成可能か)
    ある程度の期間に達成しうること
  4. Related (価値との関連性)/ Relevant(適切な)
    自分の人生にとって意味のある目標
  5. Time-Bound (期限のある)
    目標設定には期限が必要

90歳まで生きる前提で考えよう

いつまで元気でいられるのか、お金は足りるのか、長い老後を過ごすことになる現代では不安も大きいもの。この講座の最後に、90歳まで生きる前提で、キャッシュフローを作ってみることが提案されました。

月に好きなことで1万円稼げればいい、いや、5万円は自由になるお金が必要だ、など、人によって求める生活のイメージは違います。わが家のお金、個人のお金がどうなっているのかを、まずは知ることが大切です。

その上で、割り切って生活のために働く(rice work)のも良し、好きなことを仕事にする(like work)、自分の使命やミッションを実現するために働く(Life work)も良し。

セカンドキャリアは人それぞれに違っていいと、講師の西村さんは言います。準備にかける時間もそれぞれ、半年の人もいれば10年かける人もいる。だから、セカンドキャリアのための準備は、早く始めましょう。「ぼんやりとした将来像を具体的に落とし込んでいくことで、今からしなければならないことが見えてくる」とエールを送ってくださいました。