これまでとは違う新しい視点で100歳人生を考えよう

2019年12月1日(日)13:15〜16:30

会場:アートフォーラムあざみ野
主催:NPO法人ロクマル 共催:男女共同参画センター横浜北
後援:横浜市政策局 

「女性たち、60歳からの30年間を思い切り生きようじゃないか!」

1部 地域に仕事を創ろう〜想いをソーシャルビジネスという形に

為崎みどりさん(中小企業診断士)をコーディネータとして、2名の演者とともに地域の活動を語りました。ソーシャルビジネスとは、社会や地域の課題をビジネスの手法で事業として継続していくこと。理念やビジョンを明確にすることが大切です。

■上田のぶこさん
一般社団法人ピアリング/株式会社リサ・サーナ 代表
(プロフィール)
47歳。横浜市職員として市民活動支援・創業支援等に従事。2015年43歳で乳がん告知後、3回の手術を経験。45歳で退職し、がん患者同士のサポートと、がん経験を価値に変えて社会にフィードバックするソーシャルビジネスの確立に奮闘中。

女性がんサバイバーのためのコミュニティ型SNS

がんに向き合っている女性にSNSで情報を伝えたい

 上田さんは自身のがんをきっかけに2017年に起業。ソーシャルビジネスという楽しくも厳しい道を歩んでいます。さまざまながんの中でも、女性特有のがんは女性ならではのつらさがあります。がん患者にとって悩みや不安をやわらげるために必要な情報は何か。ある調査での第1位は、体験談や闘病者との交流だそうです。上田さんもネットを通して同病者の友だちができた経験から、いつでもどこからでもつながって励まし合える女性限定コミュニティ型SNSはニーズがあるはずと確信、アプリ開発をスタートさせました。SNS運営の注意点は規約で使うルールを決めています。治療の判断を求めないこと、会員同士の経験談は情報交換してよいこと、誹謗中傷・営業は禁止などです。

 がんになっても自分らしさを失わずに仲間と支え合って進んでいける場所を守っていきたいと語る上田さんです。

一般社団法人と株式会社の特性を活かして活動中

 上田さんにとっての事業立ち上げの原動力は、悔いなく人生を送りたいという切実なもので、必要に迫られて2つの法人を同時に立ち上げました。一般社団法人ピアリングの「ピア」は同じ悩みやつらさを共有する仲間、「リング」は寄り添いサポートするという意味です。

ピアリングのミッションはポジティブな会員同士の活動

 ピアリングは、つらいときにどこからでも仲間とつながれること、がんサバイバー女性がさまざまな場面で支え合える場所作りをめざすこと、手軽につなげられて安心安全なツールであること、オンラインだけでなくリアルなイベントもあること等、多くの特徴があります。がんサバイバーは「サバ女子」応援プログラムを企画開催し、会員が自主的に活動しているのも女性ならではです。

 ピアリングの2つ目のミッションは、がん患者の生の声を価値ある情報に替えて企業や医療者・行政にフィードバックし、がんに向き合う人々の環境をよくしていくこと、ピアリングというプラットホームを通じてがんに向き合っている人のリアルを伝えていくこと、がんというネガティブな経験を価値に替えて社会に発信していくことです。

社会貢献と利益事業

 スポンサーは大企業が多く対等な立場で取引ができているそうです。企業へのマーケティングで利益を得ることは、会員に情報を無料提供できるメリットです。会員アンケートの結果は、がん患者さんの生活ニーズを企業へ提供することでプラスの方向に活用されます。情報は利益事業になるだけでなく、行政や病院からのセミナー等の依頼にもつながり、委託料を受け取ることでサポート資金になります。

 社会貢献としての活用もあります。一例として、治療しながら働こうという両立支援が不可欠のなか、冊子『がんと向き合う職場のために』を作成し、全国300以上の事業所に配布して両立支援に役立てています。

これからの展望

 上田さんは乳がん経験者コーディネータ認定の勉強をし、エビデンスに基づいたサポートを心がけ、前向きなコミュニティをつくるために意図的にコミュニケーションを調整する役割を担っています。

 ネガティブながんという経験をもつ仲間の想いや経験を社会によい形でフィードバックすることで、これからがんを経験する人たちが生きやすくなる社会をつくっていきたいというビジョンを語ってくれました。


これからの高齢者の生き方住まい方〜居場所のあるシェアハウス

■前田由子さん
NPO法人川崎北部グループリビングCOCOせせらぎ 理事長

(プロフィール)

86歳。75歳まで事務職に就き、その後、高齢になっても自立して住み続けられる住まいを作ろうと仲間と共に運営委員会を立ち上げた。勉強会を重ねて土地探し、資金づくりに奔走。自立を保ちつつ助け合う日々が続いている。

グループリビングとのかかわりは人のつながりから

 新しい暮らし方が始まって5年、前田さんはあと3か月で87歳を迎えます。グループリビングとは、10名程度の高齢者たちが将来自分のことは自分ででき、お互いの人格を尊重して心豊かに生活すること・場です。自立と共生をめざし、経営者がいないNPO法人組織で、運営委員と入居者とスタッフが同じ権利をもち、自分たちで暮らしをつくっていくことが特徴です。

 苦労もあったという前田さんですが、常に発信すること、人とのつながりを大切にして情報を得ることが資金づくりにも役立ったそうです。

人とかかわることで心と頭は成長している

 グループリビング「COCOせせらぎ」では、個室で生活をすることが基本で、夕食のみ一同が食卓を囲みます。介護が必要になったら介護保険を利用しながら生活し、無理ならば転院。希望すれば、最後まで居住することもできます。グループリビングでは覚悟をもって仲間で助け合う暮らし方がいいと語る前田さん。他人との共生は難しいのですが、長年共同生活をすることで要領がわかってくるそうです。スタッフがさりげなく人付き合いを伝えることで人は成長できるといいます。

これからの展望

 さまざまな行事を企画して地域に施設開放をしている前田さんは、地域に支えてもらう関係をつくるための方策をこれからも考えて実践していきます。刺激があってきちんとした食事をし、規律が保たれ、穏やかに眠ることができる住まいであれば長生きができるのでは、と語ってくれました。


ロクマル空手パフォーマンス

 1部終了後、空手道場大瀧塾による空手道の表演がありました。ロクマル会員でもある大瀧師範をはじめとする皆さんの力強い動きが会場を凛とさせてくれました。ちなみに、ロクマルカラテはシニア層におすすめです。


2部  世界のまーちゃんと語ろう

 入田直子さん(元NHKおはよう日本リポーター・ロクマル理事)の進行で
まずは、進化し続けるまーちゃんの近況報告でした。

■若宮正子さん(まーちゃん) 

82歳でゲームアプリ開発。高齢者こそITを活用しようと国連でもプレゼンし、今や世界各国から引っ張りだこ。

(プロフィール)

84歳。銀行を定年退職後、独学でパソコンを学ぶ。82歳でゲームアプリ「hinadan」を開発。Apple社主催の世界開発者会議に最高齢開発者として招待される。2017年、人生100年時代構想会議の有識者議員に任命された。

人生は60歳からよ

「何でもやって、失敗も楽しんじゃいましょうよ」
背負わない自由な生き方に、力が沸いてくる!

日本中をかけまわる世界のまーちゃん

 1年中講演に飛び回る若宮さんは、今日も講演先からロクマル会場へ。最近は、「徹子の部屋」に出演、新聞でも紹介され、新刊本「老いてこそデジタルを」を12月5日に刊行。ご自身がエクセルでデザインしたクリスマスカラーのシャツがお似合いでした。

年齢は単なる数字にすぎない

 81歳までは普通のおばあさん、今は「にわか有名人」と自らを語るまーちゃん。たいへんだけど幸せ。フルにやるほかない。課題が与えられて勉強するし新ネタも考えないと。80代も伸び盛りだそうです。

何かを始めるのに年齢は関係ない

 実は、まーちゃんは「熱中小学校」の教諭でもあります。このプロジェクトは地方創生のための人材育てを提供する「大人の小学校」。過疎地の人々がどんな頑張りをしているか、まーちゃんも講演に巡っているというのです。今日のトークでは、各地で出会った90代で起業した女性たちや天才少女についてのエピソードを織り交ぜ、今がスタートの時とばかりに話がはずみました。

*90代で起業した92歳の女性。北海道帯広出身。夫を亡くしてから落ち込むが、花が好きなことから立ち直り、耕作放棄地を使って十勝更別で紫竹ガーデンを開園。ホテルも併設したいと奮闘中。

*やはり90代で起業した92歳の女性。青森出身。60歳から笹餅を作り、75歳で笹餅屋さんを起業。餅に餡を練り込んで翌日でもやわらかい笹餅を考案。

*11歳の天才少女はまーちゃんの友だち。彼女はロボット専門家でロボテックス役員でもある。まーちゃんが訪問したエストニアへ行ってみたいとクラウドファンディングに挑戦して多くの資金が寄せられたという。彼女には国と国の架け橋になりたいという夢がある。少女の文章が気に入ったというまーちゃん。「子どもだから」というフレーズを「高齢だから」に置き換えて読むと納得するという名文である。

「子どもだから(高齢だから)できないこともあるけれど、子どもでも(高齢でも)できることがある。子どもだから(高齢だから)できることもある。でも、子どもだからこそ(高齢だからこそ)できることもある〜(略)。できるところまでやってみよう」

まーちゃんが最近思うこと

 もっと勉強して実力をつけないとこれからの人生はやっていけないと実感したそうです。特にITに詳しくなること。先端技術を知らないと何をやるにも厳しいですよ。そして、人とのつながりは重要です。年齢に制限なし。上から目線ではなくフラットな関係を築くことで人間関係がうまくいきます。人と出会い異世代と交流しましょう。


世界のまーちゃんと地域を語ろう 
50代〜80代によるリレー対談

 入田さんとまーちゃん、そして4名の女性たちが熱い想いを語り合いました。

〈50代〉柏木由美子さん 
地域とのつながりづくりは取材から


スパイスアップ編集長

(プロフィール)

50代。フリーランスのライター。地元では自分自身が地域メディアになるべく、多様なつながりを発掘中。定年退職後の地域参加をサポートする活動や、まちのことをみんなで解決する「まちの相談所ネットワーク」などの活動に参加。

 一歩踏み出して自分のスキルを活かして取材し、ミツバチのように情報を運ぶことでいろいろな人につなげでいきたい、人から学ぶことは人とつながることと語る柏木さんです。40歳で新しい場所に住み始めたころ、新たなチャレンジを始めたことで元気をもらえたことが大きいと気付きました。

〈まーちゃんからひとこと〉今はみんながメディアになれるのです。情報発信型と情報受信型に分かれるのではなくローカルメディアになろう。

 IT関係の本はたくさん出版されていますが、私が考えるITの視点は少し違います。LINE(ライン)とは何かという問いに、コミュニケーションツールの一種と説明する本が多くあります。自分なら、LINEとはインターネット上のお茶の間です。気心の知れた人が集まる場で、遠くの人ともお茶が飲める場所です、と訳します。何ごとも翻訳・編集が必要という一例です。

 人には隠されている才能があるのかもしれません。自分は人前で話すことが天職ではないかと思えるそうです。

〈60代〉柏崎久恵さん
ものづくりをとおして交流を

Bau(藍染Tsuzukiブルー)

(プロフィール)

61歳。デザインスタジオ「HITAZ」代表。グラフィックデザイナー。子どもアート教室や草木染め講座を開催。藍を育てて染める「TSUZUKI BLUE(都筑ブルー)」プロジェクトなど、ものづくりで人が集まりつながる場を提供していく。

 Bau(バウ)とはアートの力を信じて人と人をつなげていくことです。仕事ではない活動をなぜするのか。それは、ものづくりをとおして、人と人が出会うきっかけや場の提供をしてくれるから。横浜市都筑区で藍を栽培して藍染めのワークショップを開催。また、都筑の公園の間伐材の枝で積み木を作ります。ものを作るときに人は「素」になれます。積み木づくりは大変でも誰かが来て手伝ってくれます。次は袋物を作ろう、次は染めてみよう、と想いが伝わり新たな扉が開く感じがします。ゆるくやるのがいいのです。藍の栽培も土地を貸してくれる人が出てきました。身近な木で作るスプーンも静かなブームです。今は綿栽培に挑戦しています。みんなで染めた生地を会場で披露。藍の淡いブルーが際立っていました。

(まーちゃんからひとこと)人工知能は新しいモノが作れない。新たな形を作るものづくりは人づくり・人育てです。これからは個性の時代。ものづくりは人と人が出会うための入り口として入りやすいですね。

〈70代〉江幡千代子さん
クラウドファンディングにも挑戦しちゃった

走らせよう!つづきブックカフェ

(プロフィール)
75歳。約30年前に都筑に転居して以来、町づくりや図書館応援活動に関わる。親子や図書館に行けない高齢者にも本を読んでもらおうと、車に本を積んでブックカフェを展開。読書応援団企画部、つどおうJiJiBaBa隊で活動中。

 今年の1月から動くブックカフェをスタートさせた江幡さん。キャンピングカーで絵本を中心に約300冊を移動し、椅子やテーブルを出して3時間ゆっくりと読書をしてもらいます。本の貸し出しはせずにその場で好きな絵本に出会って楽しんでほしいというもの。一昨年ブックカフェ実行委員会を立ち上げてボランティアスタッフと活動。運営資金はクラウドファンディングに寄せられた資金や多くの寄付金です。運搬の車はある出会いを契機に借りることができました。

 本の力で町を元気にして次の世代に何かを残したい。絵本の世界に入っていくことで気持ちが楽になっていきます。読み聞かせが日常にある世の中になってほしいとの想いがあります。

(まーちゃんからひとこと)何歳になったからできるというものではなく、70代になって新しいことを始めることができたのは、その歳になったからこそできたということ。絵本を読むことで子どもは成長し、大人も絵本から新たな世界が見えてくるものです。

〈80代〉遠藤升江さん
高齢者の居場所づくりは自分たちの手でやるわ

南平カフェ

(プロフィール)

83歳。始まりは自宅を開放して始めた茶話会。合唱や体操も取り入れて現在の介護予防カフェに。単身・高齢世帯の地域にあって、助け合える力がもうなくなったと思う人たちや、健康でいたいと願う仲間への心配りも忘れない。

 遠藤さんは夫を亡くして施設ボランティアで働いていた頃、自分たちは施設には入りたくない、そのためには元気でいなくてはと、有志でラジオ体操を始めました。昨年からは市営住宅の集会所でカフェをオープン。行政の支援金を得てカラオケやラジオ体操・介護予防体操、折り紙教室など、さまざまなイベントを企画しています。

 最近は市営住宅が空き家になることが多く、行政の働きかけで子育て世代の入居が増えています。子どもが少しずつ増えて自分も子どもたちから地域のおばあちゃんとしてかかわりをもつようになりました。高齢者に言いたいことは、できることは自分でやること、人とつながること、人付き合いはゆるいほうがいい、そんな生活をしていれば元気でいられるのかな、と感じる遠藤さんです。

(まーちゃんからひとこと)ほっとする居場所をつくることは、今の年齢でしかできないこと。80代だからこそできることです。


               ◇◇◇

 最後にNPO法人ロクマルの有澤厚子理事長より「びっくりビジョン」宣言。キーワードは「地産地消」。地域に仕事を創ろう、地域で人と関わろう。継続して活性化する活動で地域が元気になります。住んでいる人の声を聴くことが地域活動の第一歩。同時に何歳になっても勉強すること。学び合うことで考え方やモノの見方が変わってきます。

これまでとは違う新しい視点で100歳人生を考えてみよう!