2019年12月1日(日)10:00〜12:15
会場:アートフォーラムあざみ野

1部「これまでとは違う新しい視点で100歳人生を考えよう〜老年学入門」

講師:澤岡 詩野さん(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団主任研究員)

学び直し塾2期で講師もつとめた澤岡詩野さんが、学び直し塾では語り切れなかったお話も交え、100歳人生の考え方を紹介しました。
この講座は、学び直し塾1期生 、2期生やロクマル会員が対象です。

興味深い内容に、 熱心にメモを取る姿が多く見られました。

そもそも「老年学(Gerontology)」とは?

 「老年学」とは「Successful aging(幸福な老い)」の条件を明らかにする学問で、1940年代からアメリカで始まりました。人の幸せはどう考えどう捉えたら良いか、豊かに幸せに年を重ねるには何が求められているのか、QOL(Quality of Life)(生活の質)をいかに高めるか。また、人としてどう社会の中で輝き続けられるか。これらについて、健康・経済・人間関係・社会的な自立等の観点から考えます。

 これまでは高齢者を受け身の存在として捉えていましたが、人生100年時代の今は、主役として位置付けた「役割」や「生きがい」が大切であり、その答えは一つではなく、しっかり研究していく必要があります。

長くなった時間に迷うシニアの現状

65歳以上の高齢者の中には、次のようなことをつぶやいている人たちがいます。

  • 人生100年って言われてもよくわからない。個人で努力できることには限度がある。ただ一つ言えるのは、なるべく介護のお世話になりたくない、人に依存したくないということ。しかし、何をすればいいのかわからない。
  • 健康が大事なのは分かっているけれど、今までやってこなかった食習慣の改善とか運動とか大変なことは無理そうだ。
  • 地域と繋がろう、社会に役割を持とうって言われるけれど、地域って面倒だよね、圧力にも感じるよね。

ここで注意しなければならないのは、気楽に地域に参加できる人がいる一方、このように他人からの支援を圧力と感じて拒むシニアが、地域に増えているということです。活動する人の存在を見るだけで北風と感じて家に閉じこもってしまう人たち、この人たちを活動にどう巻き込むか、巻き起こす風を北風ではなく太陽と感じてもらうにはどうしたらよいか課題となります。

老年学に見た「健康長寿」の秘訣

  1. 80歳時に健康だった人は、その後も健康が維持できています。なるべく早いうちから日々の「外出」(週2から3回)を心がけることが効果的です。「小さな積み重ね」と「継続」がキーワードです。
  2. 「繋がり」と「役割」を持つことです。ご近所と日常的に挨拶するなど緩やかに「繋がり」続けることと、少し社会への貢献度があったり役割があったりする新たな活動を始めることです。70歳を過ぎてから新しく始めた活動がある人は、その後もずっと健康を維持しているというデータがあります。

特に男性は、人のために行った自分の活動に点数がつくポイント制になると、効果が分かりやすく可視化できるので、モチベーションが上がる傾向があります。

「生きがい」(IKIGAI)とは?

「生きがい」は、日本に根付いた言葉で海外にはありませんでしたが、2014年頃からインターネット上で世界中に拡散しました。海外の人が日本の生きがいを読み解いたのが「IKIGAI Diagram」です。

 これによると「あなたの大好きなこと」「あなたの得意なこと」「あなたが対価を得られること」「世間・社会が必要とすること」の4項目を重ね合わせた中心こそが人生の目的IKIGAIだとします。IKIGAIは、今や世界標準語になっています。

では、あなたのIKIGAIは何ですか?

 これを突き詰めていくことが長生きするのに重要です。ただし一人ではこれらの4項目は満たせません。生きがいの源にあるのが「繋がり」です。しかも繋がりの「量」ではなくて、豊かになれる「繋がりの『質』」を高めていくことが大切です。

あなたはご自分の人生の「プロデューサー!」繋がりをプロデュースする際のポイント

「地元」という視点

自立度の変化パターン(全国高齢者20年の追跡調査)を見ると、男性の7割、女性の9割が72、73歳から自立度が緩やかに低下し、虚弱化の期間が伸びています。活動範囲が生活圏に縮まって行きます。この時、地元がポイントとなるのです。「近い」=「関わりやすさ」にも繋がるからです。地元に生きがいとなる活動の場を如何に作るかが問われています。

「緩やか」で良い

 向こう三軒両隣というご近所ではなくて、バスや自転車に乗っていくようなほどよい距離感が良いのです。

少しの「プロダクティブ」            

 自分だけ楽しければいいという自己完結ではなく、サークル活動などに地域の知人や友人を誘ったり、自分以外の誰かと知識や経験をシェア(分かち合い)したりしましょう。

 起業するとか大きなボランティア活動をして疲れてしまうよりも、小さな自分なりのプロダクティブが実現できるような繋がり、これをいかに見い出すかがポイントです。

個々が「できること」を「長く続ける」環境を支えること、大事な「自立支援」

本当に大事なプロダクティブとは、個々ができることを探し出して長く続ける環境を支えることで、大事な自立支援となります。

 自分の自立を支援すると共に、誰かの自立を支援することは、100年時代にとても重要です。

 日常のおつきあいの延長線上で、その人の視点に立って一緒に考える、「してあげる」から「できることを支える」、そういうことが自立支援だというように、皆が価値観を変えていくことが求められています。

「今日」改めて考えてほしいこと

人生100年を豊かに生き続けるためには「地元」「緩やか」「プロダクティブ」な繋がりが必要です。それが、身体的には低下していく中で、人としての社会的な自立も支えていくことになります。そういう繋がりが自分にはあるか、誰かのためにどんな繋がりを生み出し、その人の社会的自立を支えるか、考えてほしいと思います。


2部「学び直し塾1期生・2期生ネットワークづくり始まりの式」

ロクマル先生より ~「50代からのわくわく体験」の開催報告

 2019年9月27日(金)、みんなのキッチンで開催した「50代からのわくわく体験」を、写真を交えながら報告しました。日頃は別々に活動しているロクマル先生が一堂に大集合するプロジェクト。来場者は自由に講座体験ブースやパフォーマンスステージを見て回り、ロクマル先生の活動を知ってもらう絶好の機会となりました。

ロクマル食のチームより

ロクマル食のチームは、食の活動を通して地域を元気にしたいという思いから、毎週水・木曜日のランチ提供や食育イベントを行っています。「学んで実践」をテーマに掲げ、調理講習会・食育や地産地消の勉強会で学んだことを、ランチや食のイベントに活かしています。

 今後も地域に食の楽しさをシェアする場、社会に役に立てる場を作っていきます!

学び直し塾修了生やロクマル会員からもひと言ずつ

ロクマルの活動への参加動機や近況報告をしました。

参加者にとってロクマルは、「人が大好きになれる」「刺激がもらえる」「私ならこれができそうだという発見がある」「人の生き方を間近に知ることができる」という場。

互いの活動を尊重し応援しようという思いが伝わってきました。
ここからまた、新たなつながり、ネットワークが生まれますように!