開催 2022年9月3日(土) 
会場 ロクマル事務局・Zoom
講師 株式会社キタガワ アルファデシベル 堀山正智氏・前田知輝氏
https://rokumaru60.info/lecture_20220903

難聴って、どういう状態のことをいうの? 難聴の家族や身の回りの人とどう接したらいい?
受講した方から「知らないことばかりだった」「接し方のヒントがわかった!」「自分が難聴になったときの参考になった」など、多数の声があがった講座。

講師の会社は、元々は調剤薬局を開いていたという。難聴による薬の飲み間違えがよくあり、薬剤師がコミュニケーションをしっかりとりたいと望んだことから、補聴器の販売・レンタルを始めたそうだ。

耳のしくみと老化を知ろう

なんと、聴力は20代から徐々に衰えていく。誰もが避けることのできない老化現象なのだ。早い人は40代で、遅い人では70代に難聴を自覚する。一度失った聴力を取り戻すことは非常に困難なのだそう。

耳は外耳・中耳・内耳(聴覚神経)という3つの部位に分かれ、聴覚神経が音を電気信号に変換して脳に伝えるので聞こえる。しかし、音が脳に伝わる経路のどこかに問題があると難聴が起こる。

難聴にもいろいろ

治療できる可能性のあるのが「伝音性難聴」。中耳炎、鼓膜に穴があいた、骨が外れたなどが主な原因で発症する。

もう一つが「感音性難聴」。別名「老人性難聴」とも言われ、治らない難聴だ。正常な聴覚神経はアンテナ状に片耳で25,000本ある。これが加齢によって減少し、高い音が聞こえなくなり年齢とともに難聴が進行していく。

難聴を長期間放っておくと「音は聞こえるが何を言っているかが分からない」という状態になる。「サ、シ、ス、セ、ソ」の子音成分が聞き取れなくなったり、聞き間違いや聞き返しが多くなったりする。

 例えば、「いとう」が「いとう」に、「ポト」が「ポット」に、「たこ」が「たまご」と聞こえてしまう。これでは、コミュニケーション障害が起きてしまう。

コミュニケーション不足から認知力低下も!?

聴覚が衰えると、話が分からないので会話が面倒になる。考えることや楽しみが減って抑うつ状態になる可能性も。危険の察知が困難になり社会との交流が持てなくなれば、認知症になるリスクが高まる。

 そこで、早めに補聴器を使って適切な「聴こえ」により脳を活性化させ、家族や友人との会話を楽しんでほしい。

補聴器をつけてスマホを耳に当てるデモンストレーション。ピーピー音のハウリングがしたら、耳から少しずらして。会場の参加者も補聴器体験をした。「わ~、こんなによく聞こえるんだ」「機種が違うと聞こえ方がまったく違うね」

難聴の高齢者には、普通の声、ゆっくり、はっきり、一対一で

大きな音がうるさい

快適に聞こえる音量の幅が狭いので、小さな音がまったく聞こえない反面、大きな音は普通の人と同じように大きくうるさく聞こえる。いきなり話しかけず「〇〇さん」と声をかけて、相手の注意を引いてから、ほどほどの大きさの声で話し始めるとよいそうだ。大声を出さなくてもよいのだ。

声の区別ができない

音の高低差が分かりにくくなるので、大勢の会話では声が混ざって識別が困難になる。息子の声と犯人の声が聞き分けられず、オレオレ詐欺に巻き込まれてしまう危険性がある。近寄って一対一で話をすると分かってもらえる。

早口が聞き取れない

言葉の内容を理解するのに時間がかかり、聞こえなかった部分が何だったか考えている間に会話が進んでしまう。早口では聞き取れないので、ゆっくり、はっきり、滑舌よく、言葉を区切ったり句読点を意識したりして話すと伝わりやすい。

知らない言葉は分からない

聞き慣れない言葉や専門用語は聞き取りにくいので、表現を工夫して分かりやすい言葉を使う。「スーツ」は「背広」に、「ベビーカー」は「乳母車」に言い換えるとよいそう。

会場からの質問に答えて

Q1:相手がどれくらい聞こえているか分からない場合は?

A1:話しかける時、「聞こえる?」と聞くのではなくて、「今日のお昼に何食べたい?」など関係ない話をしてみる。答えられれば聞こえている。

Q2:話しかける時の声のトーンは高めか低めか?

A2:話しかけは普段の声のトーンで良い。顔を見ながら少しずつ声を大きくして聞こえそうな大きさで話す。

Q3:聞こえるふりをする人への対応方法は?

A3:大切なことは根気よく話しかけるとか、メモを渡すとか。

Q4:一方的に話をする人への対処方法は?

A4:その人は相手の話を聞くのが怖いので、一方的に話をしてしまうのだろう。聞くだけ聞いてあげて、相手が落ち着いてからこちらの話をする。話し相手になることはその人の言葉の訓練や耳の訓練になり、ストレス発散にもなるのでは。

終わりに

感染対策でマスクをしているが、本当は口元を見せて話すとよい。補聴器に抵抗がある人もいるが、若い人がつけているおしゃれなイヤフォンのように、補聴器のイメージも変化している。「耳のリハビリ」と考えて恥ずかしがらずにまず試してみるとよい。

自分の耳のために声を出すのはとても大事なこと。カラオケで歌を歌ったり新聞を音読したりすることが耳の訓練になる。どれほど難聴になっても、自分の声は聞き間違う恐れがない。