必修講座Ⅰ-1 2021年10月2日
講師 関口昌幸さん(横浜市政策局)
横浜市政策局の職員として官民・公民連携で課題解決に携わる関口さんより、横浜の事例や取り組みを聞いた。どの町に住んでいようと、町の成り立ちや市政に着目してみると、将来の暮らしや地域で働くためのヒントが得られそうだ。
住んでいる町を知ろう
人口推計、男女別の人口比、心配ごとの経年変化、家族類型別世帯の割合(核家族世帯、単独世帯など)、女性の労働力率の推移(出産後に離職するため30代前後の労働者数が減る、いわゆるM字カーブ)・・・
わたしたちが目にすることの少ないデータが次々に示された。数字を客観的に見ることが大事だが、それより人との対話がより重要だと言う。年々、市民の意識は変わってきており、それによって市政も変化していく。
日本の主だった都市はお城を中心に城下町として栄えたが、横浜は港を中心に発展し、全国から人が移り住んできた。市民がお金を出し合って創ってきた町ゆえに愛着があり、市民プライドも高い。ボランティア活動も盛んにおこなわれてきた。
専業主婦の町から、女性高齢者世帯の町へ
20世紀後半までは、夫が東京に勤めに出て、女性は専業主婦となる世帯が多かった。住宅都市として発展してきた横浜は、地域の中に企業や工場が少ない。ロクマル世代(60代)が地元で働こうにも、働ける場を地域で見つけにくい課題を抱えている。また高齢者や女性の単身世帯が急激に増え、子育てや介護など家族機能が縮小し続けている。
そこに、長引くコロナ危機で高齢者の社会的孤立が深まり、地域の活動やイベント中止により共助・ボランティア活動も機能しなくなっている。
地域の課題解決は、住民目線で
こうした課題を解決するため、先駆的活動として「リビングラボ」が紹介された。市民、大学、企業、行政が連携して、互いに顔の見える関係で課題解決に取り組み、地域経済を回すことをめざす。
青葉区藤が丘では、支援を必要とする人に食事を提供する「シェアご飯」を、飲食店や地域の協力者が協力して実施している。
さらに、活用されていなかったものを資源ととらえ、環境にも経済にも持続可能性を持たせる、 「 サーキュラー・エコノミー」。一例として、ごみを堆肥化して休耕地でオリーブを育て、オリーブオイルを地域のレストランで使ってもらう活動が紹介された。
高齢になっても、女性が自分らしく働き暮らせるように
「社会的にケアされながら働き続けられる場を各地に作っていきたい」
この希望のメッセージに、受講生から共感の声があがった。介護をしている、健康に不安があるなどの事情があっても、互いに補い合えるケア付きの働き方ができれば、いくつになっても安心して働き続けることができる。
また、高齢者でも、地域コミュニティに参加できるよう、オンライン会議ツールなど、ICT環境の整備を進めていく必要も語られた。
社会構造が大きく変わり、高齢女性世帯がますます増えていくこれから。ロクマル世代のうちから、暮らしている地域がどのような政策に力を入れているのか、地域で高齢者が働き活動するための取り組みをしているのか、まずは知ることから始めたい。