このレポートは、都筑区の市民ライター養成講座を受講したライター長嶋ひろ子さんと高橋三千代さんが担当しました
ロクマル地域食堂の一日に密着取材





お弁当を購入してくれた子にプレゼントした折り紙は、スタッフKさんの手作り。カウンターにも季節の作品が展示されていました。


来店した方に感想を聞いてみた
ロクマル食堂と同じビルに入る会社で働く常連の女性Ⅰさんにお話を聞くことができました。
現在一人で暮らしているそうですが、普段はどうしてもコンビニなどのお惣菜で済ませてしまうことが多いそうです。
「食堂の日は必ず来ています。ほとんど自炊をしないので、野菜がたくさん入った、バランスの良い手料理が食べられるのはありがたいですね。味も優しい味でほっとします」と語ってくれました。
お昼ご飯は完食したはずなのに、手元にお弁当を一つ持っています。会社の人へのお土産かと思いきや「これは夕食分なんです。ロクマル食堂が開く毎週水曜・木曜は、昼食をこちらでいただいて、夕食はお弁当を買って帰るのがルーティーンです。会社の人にはここのご飯で生き延びてるね、って言われてるんですよ」と笑いながら語り、Ⅰさんは午後の仕事に向かっていきました。
ロクマル食堂のランチやお弁当が、午後の、明日への仕事の活力を作っているようでした。
受付のMさんのはなし
受付に座っているのは、Mさん。
ロクマル主催の「女性のための学び直し塾」への参加からロクマルの活動につながりました。2022年頃からロクマル食堂の手伝いを始め、今まで続けてきたそうです。「飲食業の経験もなく、最初はいらっしゃいませ!の一言を言うにも緊張したけれど、やっていく中で少しずつ慣れていった」とのことです。
ところが今年の夏に体調を崩し、しばらくお休みして最近復活したばかりだそうです。
「引こうかと思ったけど、人手がないので受付だけでもお願いできない?と一緒に活動するメンバーから言われて、今もやっているのよ。もう少ししたら、引退しようかと思うのよ」と語っていました。
食堂が開店すると、まるで蝶が花を飛び回るように軽やかに食器洗いやコーヒーの準備、お客さんが帰られた後のテーブル拭きまで手際よくこなしていました。
体に負担をかけないように、椅子に座って接客できるようにしているのですが、座っていたのはお客さんの出入りのないわずかな時間のみでした。まだまだ、みんなのキッチンの一員として、活躍できそうです。
片付けを済ませると賄いタイム

閉店後の賄いタイムに、スタッフの皆さんからお話を聞くことができました。
今日の定食のメニューを作ったのはSさん。毎週月曜日に地元農家から届く野菜を見て、今週のメニューを考えるそうです。「実はメニューの考案を任されたのは最近なんです。それまでは理事長が毎週考えていたんです」理事長も最近怪我のため休養中で、急遽その代理を任されたそうです。「理事長の作るキーマカレーは美味しかったんですよ、また早く元気になって、あのカレーが食べたいです」
帰りを待ってくれる場所がある、誰かの役に立てる場所がある。ロクマル食堂は、来場者にもスタッフにも温かい場所なのだなと感じました。
取材・文 長嶋ひろ子
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パン作りがシニア世代の生きがいに
多世代が交流するパン食堂はこんなにも愉しくあたたかい
毎月第1土曜日に、パン職人からパンづくりを学んだ定年後の男性達が、パンを作って地域の人とふれあう活動をしている。クリスマスムードが高まる12月の開催日に、子どもも高齢者も歌って、食べて、楽しんだパン食堂を取材した。
(註:2025年4月から、パン食堂は毎月第2土曜日に開催します)
パンづくり体験
「定年後のつながり、シニアの生きがい・やりがいを求めてパン作りを行っています」
定刻になるとパンじいちゃんから開催の挨拶が始まった。パン作り体験の事前予約で集まった親子5組が、エプロン・三角巾・マスクをつけてドキドキ顔で待機している。
「パン生地をこねて成形してください。二次発酵の40分とパンを焼き上げる15分の間に、私達が作ったパンを召し上がっていただきます」とパンじいちゃんがリード。「わからない事があれば、近くにいるパンじいちゃんに聞いてくださいね」とパンじいちゃん。

パンじいちゃんのサポートでバターロール型やねじりパン型に成形が進む。「どんどん上手くなってきたね!」とパンじいちゃん。今回で三回目の参加の親子をねぎらう。ひとところ成形が終わると、次はチョコレートやドライフルーツ等で飾り付け。「初めてパン作りに参加して、粘土遊びをする感覚で楽しめました」とNさん親子。
パンが焼き上がるまで、パンじいちゃんのギター演奏と歌が始まった。軽やかな歌謡曲やクリスマスソングに合わせて、自然と会場に手拍子がおこる。「キャンセル待ちでようやく来ることができました。趣味でパン作りをしていますが親子で楽しめました」とOさん親子。

赤ちゃんからシニア世代まで、多世代が集えば話がしたくなるパン食堂

イベント中盤、パンやスープと飲み物のセットを楽しみに、シニア世代や若い親子がパン食堂に続々と訪れる。
「もう何回も参加しています。都筑区産小麦が美味しくて」と緑道を歩いてきたMさんは、息を弾ませながら答えてくれた。
「ゆっくりとお喋りしながら、デザートまで頂きました」と近くの自立型ホームに入居するTさんとCさん。月初めの土曜日を楽しみにしているそうだ。
「子どもがまだ小さいのでパンは様子見なのですが、スープを中心に美味しくいただきました」と親子3人。パンじいちゃん手作りのパンに、ベビーカーに乗った赤ちゃんが目を丸くして写真に収まってくれた。
「パン作りを始めて、リタイヤ後の世界が一変しました。パン作りはそれなりのプロになれます。一から踏み出すことを、どうか恥ずかしがらずに」とパンじいちゃん代表の竹中秀夫さん。仕事が一段落して何か始めたいというシニア世代に、エールを贈る。
パンじいちゃんからのクリスマスプレゼントは、心地の良い居場所
パンじいちゃんの演奏の終わり、「12月生まれの人はいますか?」の問いかけにHさん親子が勢い良く手を上げる。娘さん2人の名前がバースデーソングに乗せて流れると、会場はまた大喝采。「なかなか予約が取れなくなりました。今日は自由にパンを作れて嬉しそう」とHさん。
子ども達が作ったパンが焼き上がり、それぞれの想いとともに家に持ち帰る頃、パンじいちゃんが大きな鍋をかき回しながら「今日のスープは好評で何回もおかわりが出ました」と感慨深げ。ライターも取材後に頂いた都筑産野菜スープは、優しくお腹を温めてくれた。またきっとパン食堂に遊びに来よう。そしてパンじいちゃんに「ありがとう」を伝えたいと思う。
取材・文 高橋三千代