このページは、ロクマルライター養成講座で学んだ受講生による取材記事です。

 私は区役所の生活福祉課で、生活保護受給者の就労支援を仕事とする就労専門相談員(以下相談員)です。働き始めて10年になる現在も相談業務のスキルアップと同時に、生活保護制度の勉強が欠かせない毎日です。

生活保護受給者で相談員による支援プログラムの利用者(以下利用者)との面談後に、一人ずつの面談内容を記録してケースワーカー(以下CW)と上司に回覧するのも私の仕事です。結果だけでなくそこに至るプロセスをCWが知ることにより、利用者を理解して信頼関係を築くことができると考え、過程のわかる記録を心がけています。

読んでもらえなければ効果は期待できません。「多忙なCWに読んでもらえる記録を書きたい」それがロクマルライター養成講座を受講した私の動機です。思いがけず、CWを「取材する」ことになり、率直な意見を聞く機会になりました。

就労専門相談員とは

利用者の役に立ちたいと願う相談員としての私の業務は、利用者が「働く」ことを通じて生活を安定させたり、社会とのつながりを持ったり、自己実現することを支えていく仕事です。人が生きていくために必要な「就労」を義務という点からだけではなくその人の権利としても考え、一人ひとりの状況に寄り添う支援が私の仕事には求められています。

公的扶助を専門とする明治学院大学社会学部新保美香教授は、就労支援のポイントを4つ挙げています。

  1. 利用者の主体性を尊重する
  2. 利用者の日常生活・社会生活面も考慮する
  3. 利用者の「ストレングス(強み・良いところ・努力など)」を見出す
  4. 利用者の未来・将来を考慮する

さらには、相談員だからこそできる役割として教授は以下の5つを挙げています。

  1. 利用者を信頼する
  2. 利用者の努力や苦労をねぎらい、励まし続ける
  3. 利用者の取り組みの結果ばかりでなく、「過程(プロセス)」を見ていく
  4. 利用者の「うまくいかない経験」を大事にする
  5. 利用者と共に歩む

参考:「平成22年度生活保護就労支援員全国研修会」新保美香教授テキスト

いずれの指摘も”なるほど”と納得でき、常に頭に入れて自らをチェックしたいと思うことばかりです。

CWとの連携・・・・CWへの取材から見えてきたこと

生活保護のCWは面接相談、生活保護の要否判定、各種調査、家庭訪問、就労指導、生活保護費の支給に関する業務全般等を仕事としており、CW1人で平均80~100世帯を担当しています。

CWからの依頼があってはじめて就労指導を相談員が担当することになります。

CWとして日々相談員の記録を読んでいる間宮CWにインタビューしました。

生活福祉課の仕事は自分に合っていると言う間宮CWは、民間企業での就労経験があります。区役所に入職するまでの紆余曲折を率直に話し、「その経験は仕事に活かせる、活かさなくてはいけない」という言葉からは、CW業務に対する強い想いを感じました。

「就労支援プログラムの中で、相談員が担当する利用者は色々な課題を複合的に抱えていることが多く、就労実現が困難な人達が多いということ。課題を解決するためには時間をかけて話しを聞く必要があるが、実際にはCWはそこに時間をかけることができていない。相談員が話を聞き課題を明確にしてくれているので助かっている。」と語る間宮CW。記録に関しては正直なところ長いとじっくり読んでいられない。問題別に簡潔に書き分けてもらえると読み易く、理解もしやすいとのことでした。

また、相談員の就労支援の専門性は認めるが、専門外の分野に関しては深く介入せず問題提起に止めて欲しいとの率直な意見も聞くことができました。

CWとして6年目。利用者に寄り添った具体的かつ的確な言葉かけが出来る。将来は地域に貢献できる活動をしたいと考えている。

おわりに

利用者の経済的自立、日常生活の自立、社会生活の自立を支援する点ではCWも相談員も同じです。自立を助長するにはCWとの連携が欠かせません。書く能力だけではなく、常日頃の仕事の姿勢そのものからもCWの信頼を得られるよう、自分を律し自己研鑚に励む事が大事との結論に至りました。

利用者との関係だけでなくCWとの関係においても「共に歩む」姿勢を忘れず、信頼される相談員を目指して、これからも日々の業務に丁寧に向き合っていきたいと思います。

取材・文・写真 二見忍

◆プロフィール
53歳で産業カウンセラー、70歳で国家資格のキャリアコンサルタントを取得。73歳の今も区役所で週4日就労支援業務に 従事。月に一度‘みんなのキッチン’でロクマルカフェを開催し「働く」の相談を受けている。青葉区在住。