2020年11月14日(土)
元気なうちは誰もが働ける場を創る
シニアの力を使って、100歳まで働ける場を創る取り組みをしている、Baba labさいたま工房。代表の桑原さんは、元々は、田舎を活性化するため、NPOを立ち上げる支援を行っていた。地方に行く機会も多く、第1次産業、村のお祭りなど、お年寄りが活躍している場面を何度も目にしてきた。
ところが東京ではどうか。お年寄りがいきいきと働いたり活動したりできる場がほとんどない。
長い人生経験で培ったこと、好きなことを活かせる場を創りたいと思い立つ。
シニアが働ける職場を創る、さらに子どもの面倒を見てもらいながら働く場を創ってしまおう、と決意。
Baba labがスタートする10年前には、構想を練っていた。
シニアが働ける場として、レストラン、カフェ、総菜店、保育園、学童保育所など、さまざまな業態を考えたが、どうせやるなら、自分の実の祖母、K子おばあちゃんの好きな裁縫をやろう。
共働きが増え、孫育てをするニーズが増えるなか、高齢者が安心して孫育てできるグッズがないことから発想を得る。抱っこ布団や、高齢者にも見やすい目盛りのついた哺乳瓶などのアイデア商品が生まれた。
立ち上げてからの苦労
簡単に人は来てくれない
立ち上げ当初は、裁縫好きなおばあちゃんがすぐに集まるだろうと少々高をくくっていた。空き家を借りてスタートしたが、おばあちゃんを集めて何かあやしいことをしている、と思わぬ噂が立つなど、なかなか理解してもらうのに時間がかかった。
PRはハッタリも
来てくれないなら出ていこうと行動開始。公民館で手芸教室を開いたり、イベント出展したり。情報発信にも力を入れていく。ホームページに、揃いのエプロンをつけ、思いっきり楽しそうなおばあちゃんたちの写真を載せる。実は、近所の人たちに出演してもらった写真だ。
こうした努力の末、NHKや新聞に取り上げられ、信頼を得ていくことになる。
技術レベルや参加動機に違いがあるから、共有が大事
裁縫工場で働いた経験がある即戦力の人もいれば、初心者レベルの人もいる。勘の良さやセンスの違いも。
参加する目的も、お金がほしい人、おしゃべりを楽しみたい人、生きがいを求める人、これもさまざま。
Baba labでは、来たいと言う誰もを受け入れている。裁縫ができなくても、チラシを折る仕事はある。仕事を細分化することで誰にも役割があり、互いに助け合って仕事ができる。
「商品を作って売る」の目的が明確なので、仲良しクラブにならず、同じ目的に向かって活動する仲間として認め合える。
さまざまなつながりから生まれる
工房の場所を提供してくれた大家さん、県の福祉関係部署、大学の研究室、企業などと連携している。社会、地域の課題解決を応援してくれる人がいることが力になる。そのためには、どういう思いでやっているのかを伝えることが大事。
地域で孤立するより、多種多様な人たちと手を組みつながる方が、チャンスも増え、広がりもできると桑原さんは言う。
最後に、桑原さんが発した印象的な言葉を。
「年をとっても、必要とされて楽しそうに暮らせるのって、生きる希望になる」