2016年3月26日(土)10:30〜15:00
主催:やまきたで暮らしてみようフェア実行委員会
共催:みんなのキッチン

小田原駅に集合し送迎バスで山北の町へ。桜の開花には少し早いこの時期でしたが、山も町も春の華やぎが感じられました。

今回のロクマルサミットは、生活の拠点を移すと働き方も変わっていくのでは、という提案です。神奈川県でも特に自然に恵まれた通勤圏「山北町」(JR御殿場線)をフォーカス。この地の魅力を最大限に活かして仕事をする人たちを訪問し、見て話しての交流です。

「山北で起業・働く」現場を訪ねてみよう! 

生まれ育った地で古民家カフェを開く

恭月 代表 沼田陽子さん

古民家カフェ
沼田さん

山北育ちの沼田さんは現在58歳。築100年の空き家を借りて古きよきモノは残していきたいという思いでイノベーション。20代のころから憧れていたパンケーキ専門のカフェを本格的に再開しました。

国産小麦粉で作ったこだわりのパンケーキを試食

パンケーキを試食パンケーキメニュー

パンケーキを味わいながら今に至る思いをお聞きしました。お店のメニューはふっくらモチモチのパンケーキにさまざまなトッピングを組み合わせたもの。20代から鎌倉のパンケーキ店で経験を積んできた沼田さん自慢のレシピです。

中断しなければならなかったけれど子育てや介護を経て今がある

山北近くでケーキ店を開いていた頃、父親が寝たきりになり娘として介護に尽くしました。その後、看取り等で仕事を中断しては再開を繰り返しながら本格的にカフェ再開。全力投球できるのはこれからです。

娘たちは和菓子職人です。これからはスイーツを通した母娘のつながりも楽しみです。「恭月」の恭は実家の魚屋「魚恭」から受け継いだ名。祖父の名前は恭太郎です。家業や甘いモノ好きだった父親の影響が今に続いているようです。

恭月店内

ここは自分の時間をゆったりと過ごせる居心地のよい場所

「パンケーキカフェはずっと続けたいやりがいのある仕事です」と語る充実した毎日の沼田さんです。山北で起業するなら、自信のある得意なものを一つ大切にすること。長年の経験から言えるアドバイスです。

山北のおいしい水でこだわりの豆腐作りを継承する

絹華 代表 栗田 功さん

絹華さんに到着栗田 功さん

栗田さんご夫婦と息子さんが経営する「絹華」は創業110年の老舗。代々この地で豆腐作りを営んできました。本日のメニューは、寄せ豆腐作りの見学と新鮮豆腐のお買い物タイムです。

五代目の息子さんによる豆腐作り体験と試食

栗田 功さん

温めた豆乳にまんべんなくニガリを加え、ていねいにゆっくりとヘラで混ぜていきます。温かい寄せ豆腐は大豆のやさしい甘みと香り。おかわりしました!

参加者からは多くの「豆腐作りのギモン」が寄せられました。ニガリを入れるとなぜ固まるの、にがりの原料は、価格の違いは。さらには食品添加物とアレルギーの話にまで話題が広がり、栗田さん親子からわかりやすいレクチャーを受けました。

原料にこだわることでおいしい豆腐が生まれる

店頭販売

豆腐作りには良質の水と厳選された大豆が欠かせません。大豆は味のよい県内の津久井在来種も使っています。菜種油は良質圧縮一番絞りを厳選使用。国産を使うためにギリギリの価格で出荷します。そのため経営を維持するために店頭販売のほか、車を使って午後から夜まで移動販売を行うなど独自の対策をしているそうです。

黄檗豆腐はお茶受けや酒のつまみに喜ばれる珍味

ご家族4人

黄檗豆腐は京都萬福寺に伝わる普茶料理の一つで、押し豆腐のようなかたい食感です。この豆腐を再現商品化した栗田さん。本家である京都の松本家は廃業し、現在では絹華の自慢の一品となりました。

山北の木材で創作活動&自然の中で家族を育む

NPO法人「ウッドボイス」 彫刻家 蘭 二朗さん

工房蘭さん

2009年に活動の拠点を都内から山北に移して創作活動を行っている蘭さんは41歳。山北町が定住対策に取り組み始めての移住者第一号です。

建築家としての創作意欲を高める山北の自然

アトリエ「ウッドボイス工房」は、元JAの空き店舗を借り、1階は仏像などの彫刻教室、2階を作業部屋としています。3人の子どもと彫刻家でもある奥さんとの5人暮らし。豊かな自然のなかで子育ても充実しているそうです。

間伐材を利用したチェンソーアートで地域のコミュニティづくり

工房風景

蘭さんの創作活動には静と動二つの魅力があります。仏像制作は精神を研ぎすませた繊細な木彫り作業。チェンソーアートはダイナミックかつスピーディーな工程に圧倒されます。いずれも1本の丸太材から作品が形作られていく芸術です。

工房に響くチェンソー音で実演がスタート

チェンソーアートうさぎ

30分という限られた時間の制作です。皆さんからのリクエストでお題はウサギ。チェンソーによる迫力あるカティングで杉の間伐材にいのちが吹き込まれていきました。蘭さんの力強い真剣な姿に参加者一同が魅了されたはずです。

ランチとなごやか談話

蘭さんの工房から5分ほど歩き、途中、駅前の観音様(蘭さん制作)に手を合わせて山北駅に戻り、サンライズやまきたコミュニティホールに移動しました。

やまきたランチ 特産品のおみやげ付き

ランチ風景豆腐2種

山北の食材たっぷりのお弁当に、絹華さんからは絹豆腐と黄檗豆腐、そしてお手製のいなり寿司が届きました。まずは足柄茶をいただきながら会食です。食後の恭月さんのスイーツに皆さんご満悦!

参加者には山北の特産品のおみやげが配られました。ずっしり重いおみやげ袋の中身は、極上足柄茶ほか豪華な品々がいっぱい!

なごやか談話〜やまきたを語ろう


フリーアナウンサーの荒木智恵子さんの司会進行で、川本 渉さん(株式会社山北まちづくりカンパニー代表取締役)と蘭 二朗さんの対談が進むなか、町長の湯川裕司さんが飛び入りでサプライズ参加。湯川さんからはご当地グルメの話題も織り交ぜながら山北の魅力を楽しく語っていただきました。

定年後は町の活性化に。活動の原動力は人とのつながり:川本さん

まちづくりのキーパーソンである川本さんは、この山北交流フェアの実行委員長でもあります。山北で生まれ育ち、セールスエンジニアとして長年働きました。これからは山北のまちづくりに関わりたいと考えている川本さんです。2015年9月に山北駅前にカフェを開店。ご夫婦で営業されています。この3月には駅前初のコンビニを開業させました。人通りが少なかった町がカフェオープンで人が増えてきていると感じるようになったといいます。買い物弱者である高齢者が増加するこれからの時代、コンビニの存在は貴重です。

カフェでの人との出会いは大きく、顔の見える環境をつくることの大切さがわかりました。地域が変わることで若者が集まります。川本さんのいきいきと語る姿を見ると働き方の原点は何かが実感できますね。

山北に定住し芸術活動を通してまちづくりにつなげる:蘭さん

対談

山北は木材の調達に好都合な立地であり自然や住環境もよく、創作活動に専念できる場です。木に触れ合える木の魅力を伝えられる町に。よそからきた人をあたたかく迎えられるような町にしたいと語る蘭さんです。

町の活性化のために定住対策や子育て対策を進める:湯川さん

町長も飛び入り参加
町が抱える人口減少や少子高齢化問題に関わるなかで、山北にはぜひ若者に来てほしい。リタイアされた方も若いときの夢をこの地でチャレンジしていただきたいと語る湯川さん。定住ではなく住み分けの提案も勧めています。定住準備には古民家を改修したお試し住宅「ホタルの家」を、また、子育て世帯向けの定住促進住宅「サンライズやまきた」も準備しました。

湯川町長は参加者からの教育・医療などの質問にもていねいに回答くださいました。子育て支援では、保育園と幼稚園の機能を併せもつ認定こども園の開園。放課後子ども教室(学童保育)を校内に設置し安心メール対応システム化、中学校は放課後の居場所づくりなどです。

                ◇◇◇

今まで知らなかった山北の魅力がわかりこの町が好きになったこと、今日の視察で山北の魅力の一端が見えてきたこと、など多くの感想が寄せられました。お菓子作りが好きだからカフェを開きたい、起業したいと思うけど何から始めたらいいの、等々、漠然とした夢や不安の声も聞かれました。今回の体験ツアーで、私たちの歩み方の選択肢に幅ができたのではないでしょうか? この町で新たに暮らし、そして起業するとしたら、どのような思いで働きたいですか?