■体験談:北村ゆかさん

なぜ発明家になったか

体験談 北村さん
「おかしな子どもだったんですよ」。自らの子ども時代をそう表現する北村さんは、幼いころからこのアイディアは使えると思うとすぐ試作を作る行動派。試作で服を切ってお母様に叱られたこともあったのだとか。

結婚前に退職していた北村さんは出産後に働きたいと思い、商品開発の仕事を目指し求職活動をしました。20社くらい面接に行ったそうですが、1社も採用には至りませんでした。「ものすごいショックで、へこんでしまいました」と当時を振り返ります。でも、こんなことでへこんでいたらダメだと気持ちを切り替え、「そうだ、アイディアを形にするような仕事をしよう!」と発明家の道へ踏み出したのです。

北村さん開発の『ふえピタ®』とは

『ふえピタ®』は、リコーダーの穴に貼る弾力性のある楕円のシールです。リコーダーの演奏が苦手だったご子息のために思いついたアイディアです。このシールを貼ることで指の力がなくても穴を塞ぎやすくなり、息漏れを防ぐことができます。発達障害を持ったお子さんや高齢者施設でも使ってもらっているそうです。北村さんが何より嬉しいのは、使ってくれた方から「魔法のようなシールです。ありがとう!」と喜んでもらえたこと。アマゾンのレビューでも4.5や4.3の評価があり、広くいろいろな方から支持されています。

『ふえピタ®』にメディアも注目

テレビ東京ワールドビジネスサテライトの『トレンドたまご』やNHKの『まちかど情報室』、テレビ神奈川の『Up To Date』などで紹介されました。放送後の反響は凄かったそうです。
また2016年2月には神奈川なでしこブランドに認定されました。横浜ビジネスグランプリのファイナリストにもなりました。アイディアをビジネスにまで発展させたことが評価されたのですね。

商品になるまでのプロセス

「アイディアが湧いてきても商品になるまでは大変なんですね。本当に大変だったんですけど、やってみたいという気持ちで今の今まできました」。北村さんの力を込めた話し方から、その大変さが伝わってきます。

北村さんがアイディアを商品化する流れ

1) 不便なことを考え調べる
2) 弁理士を決める。(弁理士は特許や商標登録の専門家)
3) 試作を作る。(工場も自分で探します)
4) パッケージを決める
5) HP作成
6) 販路

アイディアは「困ったな」から生まれる

商品を作るには、まずアイディアです。誰でも日常生活を送っている中で「これって使いにくいな、何とかならないかな」と困ったことがあると思うのですが、北村さんのアイディアもここから生まれてきます。北村さんは困ったなと思ったら、だったらどうすればいいのか考え、いつも試作を作ってみるそうです。

商品化の前に市場調査

アイディアを商品化するのは需要が見込めるものだけです。売れなければ在庫と借金を抱えてしまいます。ヤフーの知恵袋などで、どんなことで困っている人が多いのかと、とことん調べるそうです。そのときに意識するのは、多くの人が使うものであるか、良い商品だと認めてもらえるか、買ってもらえるか。
生の声も重視します。友人や周りの人に聞いて回るそうです。北村さんが開発した『ふえピタ®』もご子息のために思いついたアイディアですが、周りにも同じようにリコーダーで苦労している子どもたちがたくさんいることがわかったそうです。

新商品を開発中

北村さんは今、小指に着けて使う小さな耳かきを開発中。耳を怪我しそうで柄が怖いという人が多く、高齢になるとつかむこと自体が苦手になったりします。そういった方にも使ってもらえる優しい商品を作りたかったそうです。

クラウドファンディングに挑戦します!

耳かきを作るための金型が120万円もするそうです。ふえピタ®シールの金型だけでも50万円(ふえピタ®は元が取れているそう)。やはり初期投資が一番かかってしまう。アイディアがあってもなかなか商品化につながらないのは、この金型代が高いから。
そこで開発中の小さな耳かきでクラウドファンディングに挑戦することに。プロジェクトが成功すれば資金調達ができます。クラウドファンディングのもうひとつの魅力は、広告・宣伝効果を期待できるところ。さすがアイディアが降ってくるだけあって、着眼点が違います。

発明家を働き方の選択肢のひとつに

20年以上前に大ヒットしたダイエットスリッパは、70億円も売れたそうです。アイディアを自分で商品化するには越えなければならない山がたくさんありますが、アイディアを企業とロイヤルティ契約する方法もあるそうですから、発明は本当に夢の広がる話です。
北村さんの体験談を聞いた方の中には、働き方の選択肢に発明家を加えた方もいたことでしょう。

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