このレポートは、都筑区の市民ライター養成講座を受講したライター鈴木麻衣子さんが担当しました
2025年11月29日開催
会場 みんなのキッチン
晩秋の晴天の土曜日、30代から80代まで、女性多めの30人弱が集まった。
「お食事、だれが作るの?」をテーマに老年学が専門の東海大学准教授、澤岡詩野氏との対話型イベント。続く2部では、キャリアコンサルトの二見忍氏による自分の棚卸し講座と相談コーナーも設けられた。
まず、澤岡氏から「長くなる老後をどのように過ごすかについて、変化していく価値観や周りの状況に、今なりの自分ができることを探し、アップデートしていくことが大切。そして外せないのは毎日の食事。食事を考えることは、どこに住むか、やパートナーとの関係をどう作り上げていくのか。それは人生を考えることにつながる」とのお話を聞いた。
第1部
イベント開催に向けて、30代から90代までの150名に「食事作り・食べること」の事前アンケートを行った。

その中のお手紙弁当利用者であるMさん、94歳女性を取材した動画を見てもらった。
Mさんは、夫が亡くなるとジムの近くに引っ越した。ひとり暮らしで、ジムに通い友人たちに会う。病院に一人で行き、食事も一人でとる。洗濯、掃除もこなしている。
澤岡氏は「引っ越すにあたり、バス停やフィットネスに近いことを決め手にしている。少し先をイメージし、自分らしく暮らしている」とコメント。
続いて86歳の男性Cさん。お手紙弁当利用者で、軽度認知症の妻と暮らす。料理は自分、洗濯と掃除は妻が担当、それぞれの領域に入らないよう心がけている。澤岡氏から「互いに得意な分野を生かし、尊重し合って生活をしている」とコメントがあった。
アンケート回答者が登壇
Hさんは退職後も経験を生かした仕事をしている。
Iさんは、料理教室を主宰して、様々な人に料理を教えている。

決めつけからの解放 Hさんの場合
70代夫と二人暮らし。退職後の夫に料理を教えると、今は上手に作れるようになった。夫からの提案で、食事は各自で作り別々に食べる。もっとコミュニケーションをとりたいが、会話が少ないことが残念。現在もHさんが多忙のため、洗濯は夫が担当。やり方なにど気になることがあっても目をつぶる。
澤岡氏は「男女の役割の決めつけから解き放たれていて素晴らしい関係!」とコメント。
食への向き合い方 Iさんの思い
田舎で一人暮らしをする実家の母は料理好きで、食に関心が高い。一方、義母は料理が好きではなく、義務としてとらえていた。
食べることが好きな人は料理が苦にならず、冷凍食品や出来合いのものも買って味見し、楽しむ。義務的に作らなければと感じていると、料理自体が楽しめず、自分の好みがわからないこともある。食に対する価値観の違いや歴史的な背景もあるが、誰かのために生きてきた場合と、自分のことも意識した場合とで、違いがみられるのではないか?
うちわを上げて盛り上がる
会場では各々の席にうちわが用意された。表と裏に「いいね」と「言いたい」と書かれてあり、話している内容に対して積極的にうちわで反応を示すことができる。

言いたい①
個性、自由がある場合、個食だと各自で味の好みを調整できるのは利点。
情報過多の時代になり、知識が増え、作り方がわかり、作らなくても買える時代になった。
澤岡氏は「今の時代は、自分がどうしたいかが問われているのでは?」とコメント。
言いたい②
自分の入院で家族の役割が変わった。夫や娘が家事を分担するようになり、それぞれ買ったものを食べたり、持ち寄って鍋にしたり。シェアハウスのようで過ごしやすい。
緊急事態やショッキングなことで追い詰められないと、習慣はなかなか変わらないのでは?
澤岡氏のコメント「つまり、しくみやルールを柔軟に作り変える必要がある」に、多くの参加者がいいねうちわを振った。
言いたい③
逆に、けがをしてもやってくれない、男女の役割の固定観念をもつ人が多い? 好みが違い合わせられない、病気で制限があるのに合わせてくれない、など不満も多く噴出。
「夫婦の場合は、先が長いから話し合いを続ける、双方の関係性につながるので、すぐにあきらめないことが重要」と澤岡氏からのアドバイスに頷きながら前半終了。
コーヒータイムから第2部へ
パンじいちゃんがこの日の朝から作ったおやつパンでコーヒータイム。
パンじいちゃんの活動紹介に続いて、自宅での役割についても聞かれると・・
料理好き、冷蔵庫の整理が得意・・・いいね多数
朝食の担当、昼食は各自、夕食は妻 ・・・いいね多数
第2部では、A 澤岡誌野氏を囲んでのおしゃべり会と、B 二見忍氏による「自分の棚卸をしてみよう」の二手にわかれた。
おしゃべり会は1部に続いて盛り上がり、人の数だけストーリーや食事の形があることがわかった。
・個を大事にする祖父からの影響か、食後、夫はひとりになりたい。
・食べたいものをそれぞれが作る、作り置きしておく。週1回作り、あとは各自が取り出す。
・定年前に夫に料理を教えるも体調を崩し夫がやる気を失う。お互い元気でないと困る。
などなど
最後に、振り返りを
澤岡氏から「食は深い。今までどうしてきたか? これからどうしたいか? が詰め込まれている。各々違って正解はない。食の取り方に常識はない。生き方のヒントになる。油断すると体調を崩してしまうので、おいしく楽しく豊かに食べることを考えましょう」とアドバイスがあった。
二見氏からは、棚卸しキャリア相談後の助言として「自分を大事にして、正直になる。すると、落ち着いてきて、優しくなれる。また今度、仕事以外でも相談にのります」とコメントがあった。