このページは、ロクマルライター養成講座で学んだ受講生による取材記事です。
突然ですが・・・「あなたは騙されやすいですか?」こう聞かれたら何と答えますか?
高齢者に問うと、ほとんどの人が「私だけは騙されない」と答えます。それでいて、高齢者を狙った悪質商法による消費者被害は後を絶ちません。横浜市の60歳以上の高齢者の相談件数は、なんと相談全体の45%を占めているのです(注)。
これまで消費生活センターに19年間勤めていた私は、この経験を被害防止のために生かしたい、それにはまず地元の事情を知ろうと考えました。そこで、NPO法人ロクマルの地元・横浜市都筑区にある「東山田地域ケアプラザ」を訪ね、被害に遭った高齢者の有無や日常的に実践している情報提供、見守りのポイント等について聞いて来ました。
(注)横浜市消費生活総合センター発行「消費生活相談の動向2019」より
地域の身近な相談窓口
東山田地域ケアプラザは「地域包括支援センター」「地域活動交流事業」「ケアプラン作成」「高齢者デイサービス」の4つの機能を持つ、横浜市独自の施設です。ここでは、社会福祉士、保健師、ケアマネジャーの3職種の職員たちがタッグを組んで、色々な相談に乗っています。
悪質商法に遭遇したという事例は・・・
当所では、利用者が直接被害にあったという事例や、職員が被害救済に関わったという話はありません。しかし、「山林を買い取る」というような怪しい電話勧誘があったとか、利用した覚えがないのに「料金未納分最終通告書」という葉書が届いたとかいう話は聞きます。そのような時、「公的機関をかたった架空請求の葉書が出回っているから注意して!」という情報を、メーリングリストで自ら発信している人たちもいます。地域住民の力は大きいのです。
ケアプラザから情報発信!
体操サークルや昼食会等の主催者から依頼されて、当職員が地区センターや町内会館等で講座を開き、悪質な訪問販売の事例や被害にあわないためのポイント等について説明しています。受講者は70〜80代の高齢者が多く、振り込め詐欺等の特殊詐欺ゼロを目指して「留守番電話の設定」を勧める、神奈川県警察発行のチラシも配布しています。
悪質商法にあまり興味のない高齢者を話にどう引き込むか、この点でケアプラザという地域の組織が啓発することに、実は大きな意味があるのです。講座に参加した高齢者が「アッ、今日の講師はケアプラザ職員の○○さんだ」と気付くと、親しみを持って聞いてくれるからです。講座の後「そういう手口は知らなかったな」「これから気を付けるよ」等という感想を多くもらいます。
職員は、話のネタとなる新聞記事やテレビの報道等を日頃からチェックし、啓発用の資料も施設内にすぐ手に取れるように置いています。
地域の皆さんの見守りで消費者被害をなくそう!
高齢者を悪質商法から守るには、家族や地域の皆さんの見守りと行政との連携が大切です。「アレ?何だかいつもと様子が違うようだ」と思うような高齢者の行動に、地域の人にぜひ「気づいて」欲しいのです。そして、さりげなく「どうしました?」と「声を掛ける」こと、さらに民生委員・児童委員、ケアプラザ、消費生活センター等に「つないで」いってください。
取材を終えて
この地域に深刻な消費者被害の事例がなかったのは、住民の意識が高い上に、ケアプラザの職員さんたちの日頃の啓発活動のおかげだと思います。地域の力は大きいということを改めて実感しました。今後、地域の見守り力を高めるために、私自身も貢献できる方法を考えていこうと思います。
(取材・文・写真=上坂ひろ子)
◆プロフィール
通信教育会社に勤務の後、消費生活アドバイザー、消費生活専門相談員の資格を取得。消費生活センターに19年間勤務。2019年春退職。ロクマル会員。特技は犬に好かれること。