このページは、ロクマルライター養成講座で学んだ受講生による取材記事です。

ジェンダーの視点という眼鏡

 ロクマル世代の私は「女は結婚して子どもを産むのが幸せ、男は稼いで家族を養うのが当たり前」の中で育ちました。それでも手に職をと大学を出て就職したものの、お茶くみ、セクハラ(名前はなかったけれど)は当然、妊娠したら辞職勧告、今思えば追い立てられて専業主婦になっていました。

 再就職はパートと思った矢先に子どもが不登校になり、私は人生に失敗したと思ったのです。25年前の話ですが、今では笑い話でしょうか。

 ジェンダーとはいわゆる男らしさ、女らしさと言われるものです。住む社会で“女(男)らしさ”は違うという発見は、社会によって“性別で様々な偏見や差別がある”という発見でもありました。日本では「女は不浄」で土俵に上がらせないなんて話題があったのは最近のことですよね。

 育った環境や教育でそのジェンダーを当たり前と思う人と、そうでない人がいます。私は「当たり前」を疑わずに自分を責めました。個人的なことだけでなく、ジェンダーの視点という眼鏡をかけて今の社会を見るといろいろなことが見えてきます。

 2019年度のジェンダー・ギャップ指数(男女格差指数)で日本は153ヵ国中121位になったというニュースがありました。日本の政治に女性の参画がほとんどないことが大きな要因です。女性の議員が少ないと人口の半分を占める女性が問題とすること、例えば女性の人権やシングルマザーや高齢女性の貧困問題等々、政治の争点として取り上げられません。日本では政治家は男ばかりが当たり前になっています。


 多くの国も少し前までは日本と同じく圧倒的に男性が優位な社会でした。しかしジェンダー・ギャップ指数が上位の国では、重要なポストの女性の数を30%以上にするというクォーター制の導入や、小さい時から子どもたちに性別に関わらずたくさんの進路や可能性があることを教えて育てています。世界が劇的に変化している中、多様性のある発想や人材が必要と考えているからです。あなたは小さい時、何になりたいと思っていたでしょうか。

大切な話だけれど、ジェンダーをどう伝えれば?

 ロクマルの皆さんはどう思っているのかな?いつかジェンダーのことを話したいと思いながら、私自身はジェンダーの講義をするほど勉強したわけではないし、説明もうまくできるのか、私はずーっともやもやしていました。

どうしたらいいか、そして今回、活動を同じくする仲間の取材が実現。ジェンダーに関して大先輩である船橋邦子さん(フェミニズム政治運動家、ハチマル世代)が運営しているNPO法人にスタッフとして参加している女性Hさんにお話を聞きました。

Hさんがジェンダーを知ったのはどんな時でしたか?

 「人間関係に悩んでいた41歳の時、アサーション(自己表現:対人コミュニケーションスキル)の講座に参加しました。講師はフェミニズムの視点のあるカウンセラーでしたが、初めからジェンダーの話ではなかったです。講座終了後もグループ学習を続け、少しずつジェンダーやフェミニズムについても学び、支援活動にも参加するようになりました。」

Hさんはグループ学習に参加してどのような感想を持ちましたか?

 「当時を振り返ると、経営者の妻でしたから責任もあり、自分の年金を掛けるのを削り、男性ばかりの職場、男性中心の地域、義父の介護といろいろありました。学習する中で悔しい思いや、仕事をする上で言えない葛藤もありました。話せる仲間がいたこと、経理や現場と仕事を積み重ねたことも力になりました。」

Hさんは地域でどんな活動をされていますか?

 「従業員が共稼ぎで子育てをするようになり、会社としても協力しています。町内会との関係も長く、個人的に話を聞いたりしたこともありました。以前には妻が役員会に出ることさえ夫が嫌がるなんて話もありました。今、女性を会長にと応援しています。
 いきなりジェンダーの話では難しいと思います。自分にできることをしています。政治や制度の改革活動と地域の活動は両輪だと考えています。」


取材を終えて

 学習することでHさんは自分を取り戻し、葛藤しながらひと世代を駆け抜けてきました。その姿勢が周りに伝わっているように感じました。難しい話をしなくても、私のありのままでいこうと勇気をもらえました。そしてロクマル世代だからこそできることに気づきました。

ジェンダーの考えを知ることは性別だけでなく、年齢などから解放されて自分らしく生きることにつながります。こうした発信や気軽に話せる場作りができたらと思います。人生をより自由に、地域や子どもたちを元気に、ロクマルでジェンダーの話をしませんか?

文責・濱田範子 

◆プロフィール
ロクマル 学び直し塾一期生 子どもの不登校でフェミニズムに出会う。男女共同参画センター相談員歴17年。