このページは、ロクマルライター養成講座で学んだ受講生による取材記事です。

 私はボランティア活動に興味があり、食品ロス問題に関わる「フードバンクかながわ」の活動を通して「金沢子ども食堂すくすく」(横浜市金沢区)の存在を知りました。

この子ども食堂の代表者は加々美マリ子さん。彼女は自らの経験を原動力に子ども食堂で地域に恩返したいという信念があります。私自身ロクマル世代になり社会に恩返しができたらという思いから、加々美さんを興味深く取材しました。

子ども食堂の立ち上げ

加々美さんは、子どもが人間関係から不登校となり親として悩んでいた時期に、地域のフリースペースの活動に出会って救われた経験がありました。その活動に親子で参加し、皆で食事をして遊んでいくうちに、加々美さん家族に笑顔が戻ってきたそうです。

そのフリースペースには「親の会」もあり、加々見さんは、アドバイザーの先生からの「人で傷ついたことは、人の力でしか癒せない」という言葉に背中を押され、恩返しの気持ちを原動力に、「金沢子ども食堂すくすく」を2017年に立ち上げました。 

子ども食堂のコンセプトは、食を通じて子ども達のお腹も心も満たしてくれる居場所づくり。そこでの様々な体験により、子ども達の心が育ち、自己発見にも繋がってほしいという想いがあります。食堂の献立のみならず、遊びやイベントも季節感のあるものを心掛けているとのこと。食材や開催場所の提供をしてくれる人々や、多くのボランティアに支えられています。

さまざまな活動をする加々美さん

ホッとサロンすくすく

さらに、もう一歩前進した加々美さんは、一人親家族食料支援として、NPO法人フードバンク横浜と共催で2018年に「ホッとサロンすくすく」を立ち上げました。

こちらでは寄付による食料支援を主な目的とし、昼食の提供の他、お母さん方に向けて、子育て相談・ハンドマッサージ・ワークショップ等の工夫を凝らした企画を実行しています。

わんぱく土曜塾

また、金沢区内で開催されている土曜学校「わんぱく土曜塾」の代表も務めています。

この塾では、家や学校ではできないような体験、たとえば崖のぼり・火おこし等を子ども達に体験してもらい、生きる力をつけ、自分の夢を叶えるきっかけにしてほしいと思っています。土曜塾では、親の参加も勧めています。親と子が体験を共有することで、家庭内での会話がふえ、思い出作りにつながることを願っています。

加々美さんの夢

たくさんあそぶと おなかがすくすく そんな時は「すくすく」においで!
みんなでおいしいごはんを食べて 心も体もすくすく大きくなあれ!

子ども食堂すくすくのリーフレットより

 これは、加々美さんがつらい時期に受けた恩を、地域で支援を必要としている方に送って行くこと、すなわち“恩送り”によって、子ども達の笑顔を見守り続けていきたいという想いが託されたメッセージです。

子ども食堂という名称が使われ始めたのは、2012年頃からです。2019年の民間団体の調査によると、神奈川県で253箇所、全国では3,718箇所までになり、現在も増加傾向にあります。 加々美さんの夢は、さらに子ども食堂が増え、地域社会の中で、昔ながらの長屋のような人間関係を築いていき、やがて“大きな家族”へと広がっていけたら、ということです。


取材を終えて

子ども食堂は、子ども達にとって、楽しく食事をするだけではなく、いくつもの体験や、様々な立場の人とのふれあいこそが、かけがえのない“学びの場”になっているのだと感じました。

取材・文・写真 /  長坂栄子

◆プロフィール
地域でボランティア活動をしながら、病を克服した経験を活かし、同じ病で不安を抱えている人に寄り添えるような体験談などを表現していけたらと思う。